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第一面 i n d e x > 医療・健康・難病 >  覚せい剤
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覚せい剤



●覚せい剤とは
麻薬及び向精神薬取締法
覚せい剤取締法
あへん法
大麻取締法
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(大麻特例法)

「覚せい剤」とは、広義にはカフェインやコカインも含む脳内を刺激する中枢神経刺激薬のこと。
狭義には、覚せい剤取締法の規制対象の「アンフェタミン」「メタンフェタミン」などのこと。
日本で浸透している覚せい剤は、おもにメタンフェタミン。
精神刺激薬で、脳神経系に作用し、心身の働きを一時的に活性化させる。
「覚せい剤精神病」と呼ばれる中毒症状を起こす。
覚せい剤は強い嗜好性が生じ「乱用」「依存」をひきおこしやすい。
戦前、戦中は「ヒロポン」などとして、覚せい剤として現在指定されている成分を含んだ薬品を、薬局などで、疲労回復、高揚感、多幸感を得るための薬品として販売されていた。
現在『覚せい剤取締法』で、所持、製造、摂取が厳しく規制されている。

●「覚せい剤精神病」「精神刺激薬精神病」
ヘビーユーザー、強い依存状態におかれた者は、独力では脱出できない。

覚せい剤精神病は、覚せい剤の乱用者では、2ヶ月から3ヶ月の間使用すると、病的症状が出てくるといわれている。
覚せい剤精神病は、発病後、早期に治療すれば治る。
長いあいだ周囲から気づかれず、放置され、あるいは自身も自覚がないまま覚せい剤を使用してしまうと、幻覚などが慢性化し、固定化してしまい、完全に治すのは非常に困難となる。
早期に治療して治った場合でも、覚せい剤によって脳内は変化しつづけているため、症状再燃の準備性は長期に保持される。
身体的な依存が「覚せい剤精神病」へとつながる。
覚せい剤は、使用することで耐性が急激に上がる。
耐性が高くなると、同じ薬の量でも効果が無くなってくる。
一度でも覚せい剤を使うと、もう同じ量の覚せい剤では効果を感じることができなくなる。
使用量はどんどん増えていく。
通常の数百倍の量を使用しないと、はじめたときと同じような効果が出なくなるとされている。
多くの常習者が注射を使うのは、このため。

「覚せい剤精神病」の発症
「幻覚」「幻聴」「妄想」がおこる。
覚せい剤の使用を中止した後にには「無気力」「無関心」「自発性の低下」「感情の鈍磨」がおこる。
脳の上側頭回、下前頭回、などといった特定の脳の部分の灰白質(神経細胞)体積の減少が認められている。
灰白質体積の減少によって、いろいろな情報を処理する能力が落ちる。
前頭眼窩野、前頭極皮質、などの体積の減少も認められている。
「覚せい剤精神病」は、一度、幻覚・妄想などの症状が出てしまうと、その後は治療によって治っていても、覚せい剤を少量再使用しただけでも、以前と同じような症状がかんたんに再燃してしまう。

「精神刺激薬精神病」は、精神刺激薬を使用した一部の人に生じる精神病性障害。
「アンフェタミン類」「メタンフェタミン」の乱用では、入院、治療開始の直後に、脱力状態が6日~17日あらわれ、そののち、躁状態が10日~25日ほどつづいて、そのまま軽快することもおおい。
ときに、重篤な精神病発作を生じることがあるとされる。
幻覚、妄想、思考障害、緊張病。
長期的な精神刺激薬乱用、あるいは急性の過剰摂取では、
攻撃性、不整脈、散瞳、下痢、高血圧、高体温、吐き気、早い呼吸、落ち着きのなさ、発作、睡眠不足、振戦、嘔吐。

●再燃現象(フラッシュバック)
薬物の乱用の害は、半永久的に続くといわれている。
薬物の乱用で、ひとたび「幻覚」「幻聴」「被害妄想」などの覚せい剤精神病の症状が生じると、治療によって、表面上は回復しているかにみえても、精神異常が再び起こりやすい下地が残ってしまうともいわれている。
乱用をやめ、普通の生活に戻ったようにみえても、何かの刺激によって再び「幻覚」「幻聴」「被害妄想」などの精神異常が再燃することがある。
こうした「フラッシュバック(自然再燃)現象」は、飲酒、心的なストレス、など、ほんの小さなきっかけでもおこりやすい、とされる。
覚せい剤を使用しなくても、大量の飲酒、心理的なストレスが契機となり、「覚せい剤精神病」の症状が容易に再燃するとも指摘されている。

●「精神刺激薬精神病」の原因となるといわれている精神刺激薬
アンフェタミン類
「アンフェタミン精神病」「覚せい剤精神病」を誘発

コカイン
「コカイン誘発性精神病」
後をつけられているという被害妄想、薬物の使用が妄想的な信念に後押しされるという幻覚、監視されていると感じる。皮膚の上をアリが走る感覚、寄生虫妄想症。
繰り返される断続的な使用によって、精神病はより重篤となる。

メチルフェニデート
「メチルフェニデート精神病」
声が聞こえる聴覚的幻覚、幻視、自身を害する衝動、著しい不安、躁、誇大妄想、被害妄想、混乱、錯乱、攻撃性の増加、易刺激性。
●「覚せい剤精神病」の自覚と救助

疲労回復、高揚感、多幸感、ファッション、興味などから、はじまり、気づけば「パイプ」「注射器」などをつかう「ヘビーユーザー」「依存状態」になっているケースは多い。
ヒストリー(使用経歴)が長ければそれだけ「覚せい剤精神病」の症状は重篤となっていく。
変わり果てていく自身を意識し、何度も「やめなきゃいけない」「やめたい」という気持ちがおこっている。
だが「やめられなかった」という人が多いのが現実。
警察や麻薬取締官によって、逮捕、摘発されて、はじめて「覚せい剤精神病」と自覚するひとも多い。
「覚せい剤精神病」によって荒廃した精神で、重大な刑事事件を起こしてしまった例も多い。
「覚せい剤精神病」による自殺の可能性も無視できない。
健康にみえていた者が、数ヶ月の覚せい剤の使用を経て、全くの別人のようになり、社会生活が困難になっていく。
むしろ、だれもがなりうる「病い」として向かい合うべきだろう。
覚せい剤と、どのようなかたちで、縁を切るか「決別機会」を、肯定的に受け止めていきたい。
「人生が終わった」「人間を終わらせてしまった」ではなく、「病い」として「覚せい剤精神病」の自覚と救助が必要となる。

「覚せい剤精神病」はひとりでは治らない
警察庁「平成26年の薬物・銃器情勢」によれば、覚せい剤の再犯率は6割近くと、大変に高い。50代以上では、80.2%とある。
覚せい剤の薬物依存を断ち切るのは容易ではない。
「覚せい剤の薬物依存の苦しみは、覚せい剤の薬物依存者にしかわからない」ということを考えれば、覚せい剤の薬物依存者をたすける、たすけあう、という自己の救助の道がある。
重度のアルコール依存症の患者らがそうであるように、「覚せい剤精神病」患者らは、一日いちにちを、闘っている。
自助団体のグループでは「自分の力では覚せい剤を克服できないと認める」「人生の最優先順位に、覚せい剤を使用しない、という項目をかかげる」としている。人のためではなく、自分のためにやめる。薬物で苦しんでいる人や手を出しそうになっている人の手助けになる。「仲間をたすけることで、つながり、じぶんも救助される」という考え方を、共有すべきだろう。
「こんどこそ、本当に薬物依存を断ち切りたい!」
だれもが「やめたい!」と願っているのだが、やめることができない。覚せい剤のまえでは、だれもが無力だ。
強い意志だけでやめられるなら、もっと多くの者がやめているはずだ。
意志が弱かった、心が弱かった、ではなく、「覚せい剤精神病」だということを理解したい。
「受刑施設は、薬物依存を回復させる場所となってはおらず、『覚せい剤精神病』から救助、回復させるシステムの機能も、じゅうぶんに果たしてはいないのではないか」といった指摘があることも確認しておく必要がある。


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