日  本  福  祉  新  聞

第一面 i n d e x > 高齢者・介護 > ホームヘルパー(訪問介護員)
日本福祉新聞の運営は、皆様からのご寄付によって成り立っています。ご理解・ご協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。

『ホームヘルパー』



ホームヘルパーの社会的重要度に比べ、報酬も、社会的地位も、まだまだ低いといわざるをえない。介護保険のスタート以来、国は何度も増員を目指したが、ホームヘルパーの資格取得のためのセミナー受講者数や修了者数は多くなったが、実際に職に就く者はいまだ少ない。あるいは一旦は就労するもののそうそうに離職してしまう人は多い。何故か。それはその仕事の内容が過酷であり、報酬が安く、就労環境もよくないと言う、いわゆる3Kや4Kといわれる状況だからだ。ホームヘルパーとして就労も、8割が非常勤職員としてであり、他の福祉関係の職場と大きく異なる。あまりにも人手が足りないので、東南アジアからのホームヘルパー留学生を受け入れると言う指針も出された。もちろんしっかりとした理念と労働環境整備を徹底しているステーションもあるが、劣悪な会社も多い。それ自体悪いことではないが、介護保険報酬を新しい市場と見込んで、様々な他業種が参入もしてきた。そうした場所では、おうおうにしてホームヘルパーは『使い捨て人材』とみなされている。
また在宅だけではなく、ホームヘルパーは老人施設でも特殊な位置付けをされる。資格の話しで言えば「介護福祉士」との違いがあげられる。彼らは国家試験に合格した者であるが、同等相応とされるホームヘルパー1級であっても、試験はない。セミナーを受講すれば、得られる資格であるので、事業者として開業するのでなければ、できれば将来は「介護福祉士」を受験するようにすすめられる。
さらに看護師との軋轢も指摘される。法律上の上下間系はないが、医師と看護師の関係のように、暗黙の差別がある。かつて看護師の地位向上のために医師との間で権利闘争を経験したにもかかわらず、今度は立場を変え、ホームヘルパーを下に見ている看護師もいる。
訪問介護員養成研修課程の1級課程(230時間)、2級課程(130時間)及び3級課程(50時間)と、こうしたカリキュラムを消化しセミナーを終了しさえすれば、極論すれば、だれもが成れてしまえるものなのでああ(中には実技を一切せず通信教育でも取れる講座もある)ホームヘルパーの『粗製濫造』といったかんがあるのもまた事実だ。必死で何年も勉強し、国家試験をくぐり抜けてきた介護福祉士や看護師からしてみたら、一緒に扱われたくないのもまた、人のこころだろうか。ホームヘルパー組合も幾つか存在するが、強くはない。
だが、いわれているようにホームヘルパーの能力は低いのか。報酬や社会的地位が低いことは、適正なのか。否、決してそうではない。
在宅で、介護に疲弊している家族を支えることができるのは、ホームヘルパー以外いない。少しでも負担を軽くし、家事を助け、親身に相談にのり、全人格的に、高齢者やその家族を支えているのは、名もないホームヘルパーなのだ。
施設においてさえ、高齢者の辱そう(床ずれ)をなくすのは、優秀なホームヘルパーが勤務しているところであって、看護師が何人居ても「治療」はするが 辱そうだらけというケースは多い。理由は明確である。辱そうは、自身で動けない高齢者や障害者が、皮膚の圧迫や湿気、栄養状態などで起こるのだが、数時間ごとに体位変換をし換気をし気遣う「予防」や「ケア」は、看護師の仕事ではないからだ。そうしたことを心をくだいて親身に行なうのはホームヘルパーの仕事なのだ。
誰もが歳をとる。高齢になれば介護が必要になる。ものも忘れるし、思うように動けなくもなる。「そうなってまで生きていたくないものだ」と笑う健常者は多い。だが、実際に自身がそうした身体になり、あるいはそうした身体になった家族ト生活するとき、だれが死を望もう。辱そうを望もう。そうした家庭に入り、笑顔で介護をするホームヘルパー以上に、だれを頼れよう。要介護5の24時間完全介護が必要な在宅で、「なんで生きているんだ」という根源の問いに、無心に働く福祉者の姿を、そのまま答としていいのではないか。

T h e J a p a n W e l f a r e T i m e s


日本福祉新聞社/TheJapanWelfareTimes (c)All Rights Reserved.